打ち克つということ『ルーム』と『スポットライト 世紀のスクープ』
『ルーム』
ラジコンの場面でブリー・ラーソンの見せる眼差しが素晴らしい.子どもが子どもらしく遊んでいる.それを目の当たりにする自分は親らしい親なのだろうか.皆はいったいどうしているだろうか.そんなことが影を落としている眼差し.あらためてオスカー受賞おめでとう.足の上を走るラジコンの追い打ち最高.
呈示した疑問を登場人間に克服させることを強いる物語.「もっと大きな声で」ハッキリと言える日はまだまだ先のことだろうけど,意図しない苦難によって弱さを痛感するのが世界なのだとしたら,幸福や祝福もまた不意に訪れるのが世界なのだろう.パトカーの場面がいちばん好き.パーカー巡査GJすぎる.窓に身を乗り出すジャック君が絵的に可愛い.
乗り越えるということは非常に困難でさらにその困難のツケも自分について回ってくる.生き抜く以上それから逃れることはできない.ならばその現実と向き合う.優しくも厳しい「克服」についての映画でした.
『スポットライト 世紀のスクープ』
デリケートな問題に対峙した面々が,前傾姿勢にならぬよう注意を払いながらも腰を引かず着実に前進していくその「克明」についての映画.面白かったです.オスカー受賞も納得.
我々の目的は?ターゲットは?って話を腕組みしながら話す場面がもう楽しくてたまらないし,あちこち行って回って話を聞いてつまみ出されてデスクに戻ってまたあちこち飛び回るっていう流れもパターンが多くて良かった.マーク・ラファロが怒る場面で無駄にハラハラ.
自分を顧みることや弱さを受け入れたり羞恥心をさらけ出すことはもっとも難しいことだ.そのきっかけとなる道をつくったスポットライトチームに感服.素敵でした.
ことしのアカデミー賞関連は面白い.性格はもちろん違えどバランス感覚の研ぎ澄まされた作品が多いように思う.贅沢いえば,同じ時期にぶっ込まれすぎててちょっと忙しないよね.